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2020米国大統領選挙、米国政治、勉強したこと気づいたこと

激怒するアメリカ高校生 銃規制を呼び掛ける命のためのデモ

先日3月24日、ワシントンDCで20万人を超える人々が参加する「March for Our Lives」というデモが開催された。なんと主催者は高校生。ベトナム戦争以降の若者主導で行われる抗議としては最大規模だ。

このデモのテーマがまさに、今アメリカで深い論争を呼んでいる「銃規制」である。今回はそのきっかけ、問題を下記4章にわたってひも解いてみる。

 

1、発端 高校で銃乱射事件が発生

2、被害をうけた高校生たちが銃規制を訴える

3、銃規制が進まない根本原因

4、高校生の成果と今後への期待

 

 

1、発端 高校で乱射事件が発生

2018年3月14日バレンタインデーに、フロリダ州のStoman Douglas高校で14人の生徒と3名の関係者が銃で武装した侵入者によって射殺された。犯人は過去に同校を退学処分になっていた19歳の男性である。度々問題を起こし近所の住人に通報され、またYoutubeには”School Shooter”、学校狙撃犯になるといった内容の投稿もしていたことがわかっている。

 

当日の緊迫した様子が下記のビデオでみてとれる。映画のセットではない。普通の街の高校で響く銃声、列をなして逃げている生徒、子どもを探す親など、すべて生々しく、言葉にできないほど恐ろしい。

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犯人は逮捕され取り調べを受けているが、今回の問題点が、警察にも何度も連行されている19歳の犯人が自ら【合法】で銃を購入していたことだ。そんな理不尽な事態に同校の生徒達が怒り、立ち上がった。

 

2、被害をうけた高校生たちが銃規制を訴える

生徒たちの目的は、銃規制の強化だ。自らも精神的にショックを抱えているに違いないのだが、彼らは銃撃事件の翌日には既に Never Again MSD (MSD=Stoman Douglas High School)という団体を立ち上げ、集会や、Twitterで#NeverAgain (二度と起さない)や #EnoughIsEnough (もう十分) のハッシュタグを使って銃購入可能年齢の引き上げや、購入時の身辺調査の導入を訴えた。

 

また、3月22日には被害者や犠牲者の家族たちが集い、3人のフロリダの議員が出席する公聴会がひらかれた。背中から撃たれて亡くなった女子生徒の父親等、犠牲者の家族達が議員を糾弾し、また多くの生徒達も直接銃規制を訴えかけた。

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多くの人が賛同し、成果を上げてきているようにもみえる。しかし、立ち向かうべき敵は果てしなく強大なのだ。

 

3、銃規制が進まない根本原因

 銃撃事件については抜本的な対策はなされて来なかった。勿論これまで、銃乱射事件が起こらなかったわけではない。

1999年にSandy Hook小学校で27人の小学生が犠牲になった銃乱射事件や、記憶に新しい2017年にラスベガスで58人が銃殺された無差別銃乱射事件等、年間で100件を優に超える数の銃乱射事件がアメリカ国内で起こっている。しかし国は再発防止として策を講じてこなかった。なぜか。最大の原因と言われているのが、「NRA」という団体である。

 

NRAとはNatinal Rifle Association、全米ライフル協会

そもそもアメリカでは自衛のために銃を持つという考えが昔から広く浸透し、その権利もアメリカ合衆国憲法修正第二条で保障されている。

"A well regulated militia, being necessary to the security of a free state, the right of the people to keep and bear arms, shall not be infringed"

規律ある民兵は自由な国家の安全保障にとって必要であるため、国民が武器を保持する権利は侵してはならない

 

そしてNRAは上記憲法を根拠に、銃規制に真っ向から反対しているロビー団体である。また会員には著名人も多く、多くの政治家に多額の献金を行うことで政治的にも強い発言力をもってしまっているのだ。8億円を上る献金を受けている政治家もいる。つまり、政治家が銃規制に賛成するイコール、NRAからの献金がなくなり、自らの政治資金が大幅に減ってしまうことにつながる。これが米国政治にはびこる、大きな大きな問題なのだ。

 

下記の日本語字幕付きのビデオで話しているのが、現NRAの会長である。今回のフロリダの銃撃事件について学校、FBIなどを責めた後に、学校の警備強化の重要性を訴え、こう締めくくった。

 

“To stop a gad guy with a gun, it takes a good guy with a gun.”

“銃を持った悪いやつを止めるには、銃を持った良いやつが必要だ。

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お金と権力を持った団体がこういった主張をする。これが今までアメリカで銃規制が進まなかった根本原因である。

 

4、高校生の成果と今後への期待

NRAに立ち向かう大きな力がこれまでなかった中、高校生たちがその流れを変えようとしている。下記のこの運動の中核の一人となっているStoman Douglas校の3年生、Emma Gonzálezのパワフルなスピーチは、上記のような銃規制に対する問題に真っ向から戦っている。これは是非見てほしい。このような高校生のまっすぐな主張がアメリカを動かしているのだ。

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実際に現在、銃の撤廃とまでは行かず、銃を購入できる可能年齢の引き上げや、購入時の身元確認の実施を指示する世論は83%にも上っている。そしてこの活動の広がりをうけて、これまでNRAを支援していた企業が実際にいくつもその関係を断ち始めているのだ。

 

一方、国のトップである大統領はいったい何をしているのか。事件後は被害者を見舞ったり、ホワイトハウスに被害生徒たちを読んで意見を聞く等したが、結局NRAの力に屈し、事件の原因を銃ではなく「犯人の精神疾患のせい」とこじつけようとしている。学校のセキュリティー強化、そしてさらには「先生に自衛のために銃を持たせる」などと言っている。むしろ最初から人々は何も大統領に期待していない風潮があることも事実であるので、驚くべきことでもない。

 

こうした大人達が手をこまねいている中、高校生たちは今回のデモのように多くの人を巻き込み、主張し、これまでにない成果を上げていることは間違いない。バレンタインデーの乱射事件から約1か月、人々の声が政治を動かすまさに民主主義を、自由の国アメリカで目の当たりにする日が待ち遠しい。