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2020米国大統領選挙、米国政治、勉強したこと気づいたこと

白人至上主義者と戦うスーパーマン - Charlottesvilleで表面化した米国人種問題

スーパーマンが白人至上主義者と戦うというAFP通信の記事が目に飛び込んできた。

これまで数々の悪党と戦ってきた彼が今立ち向かうのは、白人がどの人種よりも優れているという思想を持った、白人至上主義者たちだ。急に聞くと驚くかもしれないが、この新たな敵の出現は、今まさにアメリカで巻き起こっている大きな人種問題を反映している。www.afpbb.com

 

下記長くなるが、関連する5つの出来事を時系列に書く。

①Charlottesvilleでの白人至上主義、ネオナチの行進と負傷事件

ことの発端は、バージニア州CharlottesvilleでのRobert E Lee(ロバート・E・リー)将軍の銅像の撤去が決定したことだ。彼は南北戦争時代の南部連合の指揮官であり、アメリカ屈指の名将として名高い。しかし南北戦争の原因が奴隷制であるとみなされることも多く、公共の場にその象徴が置かれるのは不快との声もあり8月12日に撤去が決まっていた。

しかし銅像の撤去に抗議するヴァージニア大学の学生たちが、前日にナチスのスローガンを叫び、松明をもって行進した。またその翌日12日の日中には、黒人より白人が優れているとの考えを持つ白人至上主義者(KKK)(= white supremacist/white nationalists) やネオナチ(ナチス崇拝者)たちが同じく銅像撤去への抗議のために行進した。そこで対抗グループとぶつかり抗争となり、白人至上主義のひとりが車でつっこみ、1人の死亡者と19人の負傷者を出したのだ。

 

白人至上主義は、黒人より白人が優れているとみなすこと、つまり黒人差別を意味する。いうまでもなく、ネオナチ同様現代では圧倒的にタブーとされている考え方である。しかしその信念を持った人たちが多く集まり今回の事件を起こしたのだ。

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KKKの前リーダーのトランプ大統領支持表明

また出来事の悪化に拍車をかけるように、日本でも教科書に出てくる白人至上主義団体であるKu Klux Klan(KKK)の前リーダーであるDavid Duke氏は同日のイベントで、「トランプ大統領とともに白人優位社会を取り戻したい」という意図ともとれる下記の通り述べた。これにより、白人至上主義団体と大統領の結びつきが懐疑されることとなる。

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 0:28- "We are determined to take our country back. We're going to fulfill the promises of Donald Trump. That's what believed in and that's why voted for Dnald Trump."  私たちは自身の国を取り戻そうと決心した。ドナルドトランプ氏の約束を守るつもりだ。それが私たちの信念で、彼に(大統領選で)投票した理由だ。

 

③トランプ大統領の声明(1)

この事件に対し、8月12日にトランプ大統領が声明を発表したのだが、なんと社会的絶対悪とされるネオナチと白人至上主義のみでなく、それに対して反対した人々も非難したととれる内容だったのだ。主に下記の2点の理由から一層事態を紛糾させた。

(1) 問題である白人至上主義とネオナチを非難するのではなく、それに対して抗議した人たちにも非があると「many sides」を使い表現した。

(2) 白人至上主義者とネオナチを名指しせず、その固有名詞すら言わなかった

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 0:08 - ”We condemn in the strongest possible terms this egregious display of hatred bigotry and violence on many sides" 私たちは多くの側面での偏見や暴力における実にひどい行動を強く非難する。

 

④トランプ大統領の声明(2)

 2日後の8月14日、批判に後押しされ再度会見を開きようやくKKK、ネオナチ、白人至上主義者を非難する声明を出したのだが、明らかに何かを読んでいるような話しぶりで、本人の意見ではなくしぶしぶ話している内容だともいわれている。

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2:36 - "Racism is evil, and those who cause violence in its name are criminals and thugs, including the KKK, neo-Nazis, white spremacists, and other hate groups that are repugnant to everything we hold dear as Americans." 人種差別は悪であり、その名の下に暴力をふるう者は犯罪者だ。KKK、ネオナチ、白人至上主義者などの扇動集団は米国民が重視するあらゆるものと矛盾する。

 

⑤トランプ大統領の声明(3)

なんとまだ続きがあるのだ。事件当日の会見で白人至上主義者、ネオナチを的確に非難せず、その2日後に改めて声明を出しなおすという失態を犯した。そこまででも非難されるのもうなづける。

しかし、それがまた翌日の8月16日の会見で記者からの質問を受けた際、やはりKKK、ネオナチ、白人至上主義の中にも良い人はおり、彼らに立ち向かった人々暴力的で非難されるべきだ」と、最初の声明の内容に戻ったのだ。

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2:41 - You had a groupe on one side that was bad and you had a group on the other side that was also very violent and nobody wants to say that. 一方は悪者(白人至上主義とネオナチ)だったが、もう一方も非常に暴力的だった。それについて誰も述べようとしない。 

3:11 - Not all those people were white supremacist by any stretch. Those people were also there because they wanted to protest the taking down of a statue of Robert E. Lee. そこにいた全員が白人至上主義者というわけではない。ロバート・E・リー将軍銅像撤去に反対する人も中にはいたのだ。

 

 

以上が事態の一部始終である。人を差別する白人至上主義とネオナチを絶対悪として非難しきれない人物が、現在のアメリカ大統領なのだ。

今回の出来事を同様に北朝鮮に置き換えて考えてみてほしい。 北朝鮮はミサイル発射、拉致などで国際的にも絶対悪とみなされている。勿論北朝鮮の中という国の中には良い人はいる。しかしだからといって、北朝鮮がこれまでしてきたことを正当化し擁護できるだろうか。今回はその点で断固として立ち向かえなかったため、大統領が白人至上主義と個人的なつながりがあるのではとの疑念を生んでしまい、且つ非常に強い非難にさらされているのだ。

 

アメリカも人種差別問題については長い戦いの歴史があるが一筋縄ではいかない。今回もまさに「スーパーマンの手も借りたい」ほど議論や批判を巻き起こし、トランプ政権の歴史に刻まれた出来事であることは間違いない。