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2020米国大統領選挙、米国政治、勉強したこと気づいたこと

アンドリュー・ヤン氏の離脱 // 18歳以上のアメリカ国民全員に毎月1000ドルを配布?

 

昨晩、Andrew Yang(アンドリュー・ヤン)が大統領選を離脱するとのニュースがありました。

ヤン氏は民主党の候補者の一人で、当選したら【18歳以上のアメリカ国民全員に毎月1000ドルを配布する】と謳い非常に注目を浴びていた人物です。初めてそれを聞いたときは、実現できっこない、当選したいがために言っていると思いましたが、よく聞けば彼にはアメリカの問題に向き合った、しっかりとした理論、理屈がありました。そしてあながち実現不可能でもないようなのです。

もうヤン氏は選挙は離脱してしまいましたが、彼が提唱していたそのユニバーサルベーシックインカム(UBI)という制度と、アメリカが直面している問題について今日は書きたいと思います。

 

1、アンドリュー・ヤン氏とは

大統領選の民主党候補選びの戦いの中のひときわ異色のアジア人、それがAndrew Yang氏です。台湾からの移民二世で、弁護士や起業家として成功していた経歴を持っています。また大統領選立候補までは政治経験がありません。

大統領選に立候補してからは、自身の支援者をYang Gang (ヤン軍団)として積極的にテレビのトークショーやラジオ、Youtubeにも出演し、若者を中心に支持を伸ばしています。インタビューを見ていても、抜群に頭がいいんだろうなということはすごく伝わります。

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肉体的にも精神的にも辛いであろう選挙戦を、どの候補者よりも楽しんでいるように見え、またユーモアのセンスも抜群でした。その例として、彼がよく口にしていた選挙戦でのスローガン、"MATH"。これだけ聞くと、「え…算数?数学?」となりますが、これは "Make America Think Harder" という標語の頭文字をとったもの。直訳すると、「アメリカにもっと考えさせよう」でしょうか。その頭文字をとって、MATH、つまり自身の得意な「数学」とかけているのです。

しかしこの標語、どこかで聞いたことがあるような気がしませんか?そう、2016年にトランプ氏が当選したとき掲げていた、 "Make America Great Again" (アメリカ合衆国を再び偉大な国に)にかけているのです。トランプ氏はその頭文字で "MAGA"、「マガ」と略して呼んでいました。選挙で戦う相手の標語をパクり、自分のものにしていてちょっと笑えます。

 

 他の有力候補者の中、上位数名しか出られないテレビ討論会にも何度か出席し(発言時間は非常に毎回限られていましたが)健闘していたのですが、アイオア州、昨日のニューハンプシャー州の選挙で票を集めることができず、昨晩2/11、大統領に当選する見込みが限りなく少ない中、これ以上支持者から支援金は受け取れないとして離脱を宣言しました。

 

2、ユニバーサルベーシックインカム制度

冒頭にも書きましたが、これは簡単に言えば【18歳以上の全アメリカ国民に月1000ドルを分配する】制度、またの名をFreedom Divident (フリーダムディビデント / 自由の配当金)ともいいます。これはヤン氏が突拍子もなく言い出したのではなく、アメリカ建国時から提唱されていた考えのよう。彼はこの制度が、下記のようなアメリカが抱える問題を解決する糸口になると考えています。

・社会問題① 機械に奪われる雇用

身の回りで人の仕事が機械に代わっていたこと、ありますよね。一番身近なのは、スーパーやコンビニで見かけるセルフレジではないでしょうか。機械で商品をスキャンして支払いまで、店員の手を必要とせず済んでしまいます。私の生活範囲内では、この形態のレジを増やす店がどんどん増えてきています。

これは一見人為的ミスも減り、「便利になった」ように感じるかもしれませんが、裏を返せば人の仕事がどんどん奪われています。なんと、以降12年で3分の1のアメリカ国民が、テクノロジーに職を奪われるとヤン氏は言っています。トラックの運転手も、アメリカでは29もの州で最も雇用を生み出している職業ですが、無人で自動運転するトラックの開発も近いうちに実現すると言われており、失業が危ぶまれています。

そうなると、新たな雇用機会を新しく作ることが最も重要ですが、月に1000ドル配布することにより、人々の最低限の生活への不安は解消されるのではと、ヤン氏は提唱しています。このお金により、本人のスキルアップの手助けにもなるでしょう。

・社会問題② 反移民感情の高まり

近年、特にトランプ氏が大統領になってから移民に対するへの世論が厳しくなっています。メキシコとの境界に壁を作り、不法移民が入れないようにするという政策だけでなく、自国のギャングの暴動から逃げてきた難民申請者にも、米国内の風当たりは非常に強いようです。

そこでヤン氏は、「雇用の喪失への恐怖や生活の不安が、移民や他人種に対するヘイト感情を生んでいる」と提唱しています。勿論それだけが原因ではありませんが、移民が来ることで、ただでさえ減っている雇用の機会が一層争奪戦になる ⇒ 結果的に自分の生活が苦しくなるのでは という心理も、人々の考えのどこかにあるのではないでしょうか。このヘイト感情も、自身の生活が保障されれば少しは解消されるのではと、ヤン氏は述べていました。

・社会問題③ 税金を払わない大企業

Amazonといえば、今やだれもが知っている大企業ですよね。家にいながら物を買うことができ、家に届けてくれる。取り扱っている商品ジャンルも多岐にわたり、とても便利です。しかし、驚くべきことにAmazonアメリカで税金を支払っていません。2018年に112億ドルもの利益を上げましたが、連邦税として支払ったのはまさかの0ドル。Amazonの発達により、これまで米国内の3割もの店やショッピングモールが閉店してしまったともいわれていますが、国や国民への還元を一切していないのです。同じく、GoogleFacebookも公平な量の税金を払っていないとヤン氏は言います。
 

そこで【人の仕事や情報を奪っておいて国には一切お金を落とさない】というこの仕組みを悪として、ヤン氏はこれらの企業に課税をすることで、全国民への資金配布の財源とすると宣言していました。

 

本人が簡単にこの制度を説明していた動画も貼っておきます。

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3、所感

ユニバーサルベーシックインカム制度、最初は突拍子もなかったように聞こえましたが、少しは実現できそうな気もしてきませんか?勿論良いところだけではなく、問題もとてもたくさんあると思います。今回はアメリカの問題として書きましたが、日本でも全く同じことが言えるのではないかと私は思っています。

また、他の候補者がトランプ氏のやり方を非難し打倒すべく取り組む中、「トランプ氏は【問題】そのものではなく、社会で起こっている問題の【症状】である。」として、ヤン氏が独自の切り口で問題解決をしようとしていたのがとても印象的でした。まだ政界への意欲は途絶えていないようなので、また彼の活躍を見る機会もありそうなので、その機会を楽しみにしています。^^

 

最後に、彼が離脱を表明した昨晩のスピーチを貼っておきます。

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